ご挨拶

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 日本水文科学会第13期会長を拝命いたしました。今後3年間よろしくお願い申し上げます。日本水文科学会の設立が1987年ですので、第13期は学会の32年目からの運営を担当することになります。この間、学術のあり方も、社会の状況も大きく変わりました。この変化の中で学会の運営も大きな変革を強いられています。
 日本の学界の最大の問題は学会会員数の長期的な減少傾向にあります。この問題については日本地球惑星科学連合(JpGU)でも議論されていますが、3月25日に事務局長から理工系学会の会員数の推移を示す表が送られてきました。この情報は男女共同参画学協会連絡会が2005年から行っているアンケートに基づいていますが、記載されている16の学協会の会員数の状況を眺めるとおもしろいことがわかります。それは、星、動植物といった、これが好き!という人が多いと思われる学会は会員数を減らしていません。一方、業界との関わりがありそうな学会は減っています。ということは学会の会員数の減少は昨今の日本の経済の事情を反映しているということになります。このことは日本が「科学のための科学」をやる余裕がなくなってきたこと、「社会のための科学」を推進する必要性を示しているのかも知れません。また、若手の会員数が減っているとのことですが、これは人口減少時代の中でポストが減っていることと、研究者という職が若者にとって魅力あるものではなくなっているという二つの理由があると思いますが、これは日本の科学にとって喫緊の問題です。このように会員減少問題には複数の要因があり、それは時代背景と関連しているため、研究と研究者のあり方、社会との関係を根本から見直さなければならない時代が来ていると考えています。
 20世紀終盤の1999年に世界科学会議がハンガリーのブダペストで開催され、いわゆるブダペスト宣言が発表されました。それは知識の生産と活用が分離された20世紀型の科学のあり方の見直しと、21世紀型科学として平和、開発、社会のための科学という側面が加わったということを意味しています。このような時代に日本水文科学会の方向性をどのように定めたら良いのでしょうか。日本水文科学会の前身であるハイドロロジー談話会の機関誌「ハイドロロジー」の創刊号(1967 No.1)で、故山本荘毅先生はこのように述べています。「水文学は庶民の学問である。庶民の学問は必要がその存在を保証し、発達を要請する」。私なりに解釈するとこうなります。社会のための科学の実践者はエリートの側にいてはいけない。社会の中で、社会のための研究を庶民(ステークホルダー)と一緒に実施するのだ。これはブダペスト宣言、その後のFuture Earth、SDGsの精神と同じではないですか。世界が日本水文科学会の誕生時の精神に追いついてきた現在、我々はそのトップランナーとしてその責務を果たさなければなりません。それが学会の活性化につながると考えています。

2019年4月1日 日本水文科学会 第13期会長 近藤昭彦

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